人事異動
堀 勝 教授(電子工学専攻)(低温プラズマ科学研究センター長)が、令和4年秋(11月3日)の紫綬褒章を受章しました。
低温プラズマ科学の分野において、プラズマの計測方法を確立し、これまで未知であったプラズマプロセス中のラジカルと固体との相互反応機構を定量的に解明し、新しいプラズマの制御方法を世界に先駆け実現した。
また、これらの成果により開発した高密度大気圧低温プラズマ装置を医療・農業の分野に展開し、新たな学際領域を開拓するなど、斯学の発展に多大な貢献をした。
エッチング表面に入射する高エネルギー粒子の入射角度分布の精密測定に成功しました
電子工学専攻の豊田研究室では、半導体加工において重要なエッチングプラズマの解析を進めています.フラッシュメモリなどの製造では穴の径に対して数10倍以上にもなる深い穴を形成する加工をおこないますが,その際には基板面に対してきわめて高い精度でイオンを垂直に入射しなければなりません.しかしながらこれまでは入射イオンの垂直性がどの程度の誤差で実現できているかを実際の装置で評価した例はありませんでした.我々は基板を設置する電極に入射するイオン角度分布を計測する特殊な計測装置を独自に開発し,実際のエッチングと同じ条件で入射イオンのビーム拡がりを2次元画像で測定することにより,入射イオンの拡がり角度を0.1°以下の高精度で計測することに成功するとともに,イオンだけでなく高速の中性粒子の入射角度の拡がりを測定することに世界で初めて成功しました. この研究成果は,今後のメモリー高密度化に向けたプラズマ制御の指針を得るための重要な情報を提供するもので,メモリー製造技術の高度化への応用が期待できます.
イオンおよび中性粒子ビームのイメージング測定例
エッチングプラズマ源におけるイオンおよび中性粒子ビームの角度分布測定
電子工学専攻・須田研究室では窒化ガリウム縦型パワーデバイスの要素技術としてイオン注入によるp型GaN形成の研究に取り組んでいます。
グリーン社会実現に向けて、電力変換に用いられるパワー半導体デバイスの性能向上を目指して研究を行っています。ワイドギャップ半導体である窒化ガリウム(GaN)は、エネルギー損失を劇的に低減できる次世代パワーデバイス用材料として期待されています。パワーデバイスを作製するのに必要な技術の一つにイオン注入による局所ドーピング技術がありますが、イオン注入によってp型GaNを形成することは、長年の課題でした。須田研究室では、イオン注入後の高温熱処理を超高圧で行うことでp型を形成する技術の開発に成功し、また最近では、超高圧でありながら実用が視野に入る温度1300°C、圧力300 MPaの熱処理で形成可能であることを見出しました。本成果は、窒化物半導体国際ワークショップ(IWN2022, 2022年10月ベルリン開催)にて発表しました。
(a) 縦型パワーデバイスにおける局所p型ドーピングの例。(b) イオン注入と高温超高圧熱処理によるp型GaN形成プロセス。(c) ホール効果によって測定した、形成したGaNの正孔密度と移動度の温度依存性。温度1300°C、圧力300 MPa、60分の熱処理により、エピタキシャル成長と同等のp型GaNを実現。(Appl. Phys. Express 14, 121004 (2021))
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電子工学専攻・大野(雄)研究室では摩擦帯電を用いたエネルギーハーベスティング技術の研究を進めています。
大野(雄)研究室では、優れた機械的特性と電気伝導性を併せ持つカーボンナノチューブを用いて、人と調和する柔軟なウェアラブルデバイスの研究開発を行なっています。このようなウェアラブルデバイスを駆動する電源として、環境に存在する微小なエネルギーから発電するエネルギーハーベスティング技術が期待されています。本研究では、摩擦帯電を用いたエネルギーハーベスティング技術に着目し、人の動作や運動から発電することが可能な柔らかい摩擦帯電型発電シートを開発しました。
作製した発電シート(a)とその出力電圧(b)
間欠動作回路(c)を用いて拍手により腕時計を駆動させた様子(d,e)
情報・通信工学専攻・河口研究室では実空間と仮想空間を接続する新たなディスプレイロボットの研究開発を進めています。
バーチャルリアリティに代表される仮想情報空間が広がりを見せるなか、物理空間や他の仮想空間を接続・融合するための新たなコミュニケーション手段が求められています。
河口研究室では球体ディスプレイ、360度カメラ、AMR(Autonomous Mobile Robot)、IoTアクチュエータなどを組み合わせた新たなモバイルロボットMetaPoを開発し、任意の空間同士を複数のコミュニケーションのモダリティによって接続する手法の研究開発を行っています。その最初の成果として、8月にバンクーバーで開催された国際会議ACM SIGGRAPHで発表を行いました。
開発したモバイルディスプレイロボットMetaPoおよびそれを利用したコミュニケーションの様子
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電子工学専攻・五十嵐研究室(未来材料・システム研究所協力講座)では次世代エネルギーデバイス実現のための物性研究を進めています。
持続可能社会の実現のため、高速・高効率かつ超低消費電力の次世代エネルギーデバイス材料の研究が求められています。このような半導体デバイスの作製には、半導体結晶への異種原子の導入と分布制御(ドーピング)が不可欠です。名古屋大学の最先端分析機器を利用し、異種原子の分布や、結晶原子配列の乱れ(欠陥)などを原子分解能で計測・制御する技術を開発し、半導体物性制御の研究を進めています。
窒化ガリウム(GaN)結晶の欠陥と異種原子(Mg)分布の観察例
情報・通信工学専攻 教員公募
名古屋大学大学院工学研究科情報・通信工学専攻では教員(教授1名)を公募しています。(学内向け情報にも掲載しております。)
ご応募をお待ちしております。
低温プラズマ科学研究センター 教員公募
名古屋大学低温プラズマ科学研究センター(工学部電気電子情報工学科および工学研究科電子工学専攻兼担)では教員(教授1名)を公募しております。(学内向け情報にも掲載しております。)
ご応募をお待ちしております。
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電気工学専攻・山本研究室では,コロナウイルス対応型フェイスシールド用超小型パワーエレクトロニクス回路の研究しています。
パワーエレクトロニクス研究室では、2019年に端を発したコロナウイルス蔓延に対して集中治療室等で医療行為に従事される皆様が使用可能な紫外LEDコロナウイルス殺菌機能付医療用フェイスマスクを実機構築し、空気を安全に循環させるためファンとウイルス殺菌効果を持つ紫外LEDを駆動させる小型軽量パワーエレクトロニクス回路システムを新たに開発しました。
今回は電動ファン並びに紫外LED駆動用パワーエレクトロニクス回路に対して並列化技術を適用することで小型軽量化・高効率化を実現し、医療従事者の方々の重量負担を低減化しながら、バッテリ駆動時間を大幅に延長することに成功しております。また、新開発したパワーエレクトロニクス回路にはLEDの劣化検出機能も付加し、コロナウイルス不活化に対する信頼性を高めることも実現しております。
電気工学専攻 女性教員公募
名古屋大学大学院工学研究科電気工学専攻では女性教員(助教,最大2名)を公募しています。(内容については詳細を参照)
ご応募をお待ちしております。
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情報・通信工学専攻・武田研究室では,人間と機械が調和する知的な情報処理技術を研究しています.
武田研究室では,機械学習や統計的信号処理に立脚して,実世界における人間と環境のインタラクションを対象にした知的な行動信号処理技術を研究しています.特に,自動運転,人間行動理解,音声変換,それらに必要な人間と機械のインタラクション技術の研究に取り組んでいます.例えば最近では,サッカーにおいて,軌道予測に基づいた評価値と実際の評価値の差に基づき,基準となる予測された動きと比べて,どのように動いたことが得点機会の創出に寄与したかを定量的に評価する技術を開発しました.
図:方法の概要. (i) まず評価値を計算し,(ii) 次に選手の軌道を予測する.(iii) 最後に,実際のゲーム状況での評価値と参照(予測)したゲーム状況での評価値の差によって,チームメイトのために貢献した動きを評価する.
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電気工学専攻・三好研究室(宇宙地球環境研究所)では、スーパーコンピュータを用いた宇宙空間プラズマ現象の計算機シミュレーションを進めています。
電気工学専攻・三好研究室(宇宙情報処理グループ)では、宇宙空間を支配する保存則を高精度に解くための独自の数値解法を開発しています。また、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)技術に基づいた独自の並列プログラムにより、宇宙空間プラズマ現象の研究を行っています。名古屋大学のスーパーコンピュータ「不老」Type I(Fujitsu FX1000)の全ノード(2,304ノード=110,592コア)を用いた超並列計算において、1ペタフロップス(1秒当たり1,000兆回の浮動小数点演算)を達成しました。これはシステム全体の理論性能の約13%の実効効率になります。
(a)スーパーコンピュータ「京」6,144ノード(=49,152コア)を用いたミニ磁気圏の再現。(b)渦の回転とイオンジャイロ運動の向きによるケルヴィン・ヘルムホルツ不安定の発展の違い。(c)名古屋大学のスーパーコンピュータ「不老」。
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電子工学専攻・ナノ情報デバイス研究室(未来材料・システム研究所協力講座)では、窒化ガリウム(GaN)を用いた世界初の深紫外光レーザ・超高周波デバイスの試作に成功しました。
すべてのウィルスの不活化が可能な世界最短波長271.8nmのレーザダイオードを旭化成と共同で世界に先駆けて開発しました。また、次世代無線通信や気象モニタリングレーダーとして期待されるX帯IMPATTの作製にGaNでは世界で初めて成功しました。
271.8nmレーザダイオードの発振の様子
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地球上空のプラズマの変動を計測する国際観測網を展開しています。
電気工学専攻・塩川研究室(宇宙電磁観測グループ)では、地上90-1000 km高度の部分的に電離したプラズマ領域(電離圏)が宇宙空間や大気から受ける影響を調べるために、世界10カ国以上のグループとの国際協力に基づき、北海道陸別町に2基の大型短波レーダー装置を設置し、2006年から継続して観測をしています。このプロジェクトはSuperDARN(Super Dual Auroral Radar Network)と呼ばれており、数多くの成果が上がりつつあります。
(上図)北半球及び南半球における、SuperDARNレーダーの分布図(丸点)及びオーロラ発光域(黄色の領域)。(中図)SuperDARNレーダーの観測対象となる現象の模式図。上図、中図とも西谷准教授来による論文。北海道陸別町のレーダーを始めとする、オーロラ発光域より低緯度側の領域における自然現象を対象とした科学的成果に関するレビュー論文が、Nishitani et al.(2019)として日本地球惑星科学連合誌(Progress in Earth and Planetary Science)に掲載されました(2021 PEPS Most Cited Paper Award受賞)。(下図)SuperDARNレーダーの観測データから得られた電離圏プラズマの速度分布図。このような宇宙天気図を1-2分の時間間隔で取得しています。
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電子工学専攻・川瀬研究室では、高速波長切り替え可能な新型高強度テラヘルツ波光源を開発し、リアルタイム分光を実現しました。
電波と光の中間に位置する電磁波であるテラヘルツ波帯には、未だ実用的なリアルタイム分光システムがありません。そこで川瀬研究室では、光注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器(is-TPG)の波長を高速で切り替えることができる新たな方式を開発し、最大17波長でのリアルタイムテラヘルツ分光を実現しました。本成果はレーザー学会年次大会や他2つの研究会で優秀論文発表賞の表彰を受けています。
(A)高速波長切り替え可能なリアルタイムテラヘルツ分光システム (B)17波長までの高速波長切り替え及び、試薬識別の様子
電気工学専攻・中村研究室では、分子動力学シミュレーションを使って、光渦による螺旋状ナノ針構造形成の機構解明を目指しています。
光渦は螺旋波面とドーナツ型強度分布を持った電磁波であり、新たな通信モード、物質操作、さらには、レーザー加工などへの利用が期待されております。光渦レーザー照射によってタンタルの螺旋状ナノ針構造形成が報告されていた。我々の研究室では、光渦がタンタル原子へ働く力をモデル化し、分子動力学法により各原子の運動を計算することで、この螺旋状構造をコンピュータ上での再現に成功しました。この研究報告は、日本シミュレーション学会より2020年度の研究賞として表彰されました。
分子動力学シミュレーションにより形成されたタンタルの螺旋状ナノ針構造。らせん状のねじれた構造(赤い補助線)が形成されている様子がはっきりと再現できている。
電子工学専攻・五十嵐・長尾研究室(ナノ電子物性研究グループ)は、磁壁の役割をするスキルミオンを観測することに成功しました。
これまで、「ドメインウォール・スキルミオン」と呼ばれる状態が量子ホール強磁性・液晶・磁性、類似の状態が超伝導体・ボース=アインシュタイン凝縮体・場の理論など様々な物理学分野において理論的に予測されてきました。今回、五十嵐・長尾研究室では、ローレンツ電子顕微鏡を用いて、磁性体中のドメインウォール・スキルミオンを直接観察することに成功しました。ドメインウォール・スキルミオンが実験的に実証されたことから、様々な物理学分野において進展が期待されます。また、磁気構造を制御することでスキルミオンの電流駆動経路を設計できる可能性があります。本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に掲載されました。
情報・通信工学専攻専攻 佐藤・小川研究室では日本語文の平易化支援技術の開発に取り組んでいます。
情報・通信工学専攻専攻 佐藤・小川研究室では、日本語文を平易に言い換えるための支援システムを開発しています。このシステムは、(1)文の分割、(2)文末表現の平易化、(3)語彙の平易化、(4)専門用語の平易な説明生成の4つのモジュールからなり、難解な表現に対する書き換え候補を提示します。文末表現の平易化については、研究室でこれまで開発してきた日本語解析器Panzer・生成器HaoriBricks3と、深層学習による汎用のマスク言語モデルBERTを組み合わせることで、従来手法を大きく上回る性能を達成しました。
テキスト平易化支援システム
電子工学専攻・藤巻研究室は、窒化物磁性ジョセフソン接合におけるπ位相シフト状態の実証に成功しました。
量子計算機の基本素子である、磁束型超伝導量子ビットの動作には、外部からの磁束バイアスによる超伝導位相の制御が必須であり、大規模量子回路の実現に向けた主要課題となっています。今回開発に成功した、π位相シフトした窒化物磁性ジョセフソン接合を量子ビットへ導入することで、磁束バイアスが不要となり、量子回路大規模化の加速が期待されます。(国研)情報通信研究機構との共同研究による成果です。
(左)π位相シフト磁性ジョセフソン接合の概念図と(右)π位相シフトを示す実験結果。
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研究分野