二葉会 会長あいさつ
このたび二葉会という長い歴史を有する会の取り纏め役を仰せつかりました。私が名古屋大学電子工学科に入学しました昭和39年の頃は景気の波に高低がありましたが、我が国はいわゆる高度成長期のまっただ中で、工学部の規模が拡大基調にありました。折しも戦後のベビーブームで18歳人口が大幅に増加し、大学の入学定員増への追い風となっていました。当時は大学への進学率は12~13%程度と欧米に比べてやや低く、大学院修士課程への進学率はさらに低く、その卒業生・修了生はいわゆるエリートであったと思います。企業の採用担当者の中には「修士様」の取り扱いができないと漏らす方もおられたと聞きました。
あれから約半世紀。高校への進学率はほぼ100%、大学への進学率も50%を超え、大学は「ユニバーサル化」と言われる状況に変貌し、名大電気系学科も「同級生」は80名から120名余に、クラス編成も2クラス編成へと変化しました。現在、ほとんどの国立大学では修士課程(博士前期課程)への進学率が80%を超える時代になり、大手企業に職を求める学生のほとんどが大学院修了生という時代になりました。修士課程における2年間は、他大学からの新顔も入り交じって、指導教員(教官)を頂点とする研究室での研究活動が中心となり、所属する学会などでの全国的な研究者の輪に取り込まれ、母校たる電気学科、電子工学科など学科単位の活動はほとんど無くなりました。学科・専攻の求心力は希薄になっていると言わざるを得ません。その結果、若い二葉会諸氏が「同級生」あるいは「同窓生」という言葉から連想されるイメージは熟年世代のそれとは異なるものになっているのが実情です。
2012年。世界経済は混乱し、我が国の政治もその例に漏れず行く先が分からない状況が続いています。昨年は「3.11北日本大震災」を経験しました。この状況は100年前の混沌期とよく似ているとも言われます。世界は20世紀の前半の混沌期を経て、後半の大きな発展を成し遂げました。この発展に電気・電子工学の果たした役割は極めて大きく、二葉会諸氏はこの発展に大きく貢献してこられました。21世紀初頭は、環境エコ・安心・安全・豊かさなどをキイワードとする新しい技術を模索する時と言えましょう。電気・電子工学は21世に新しい発展を作り上げる原動力とならなければなりません。
二葉会は今や7000人を超える会員を擁する巨大な同窓会となりました。二葉会は20世紀後半にあたる50年余の歴史の中で、全国、地域、企業内など様々な単位で、横の繋がりを保ち、また、卒業・修了生の受け入れや大学における研究教育活動への支援に大きな力となることで、我が国の技術と生産・経済活動の発展の下支えをしてきたと思います。世界経済は金融によって右往左往しているように見えますが、経済の発展、人類の豊かさは富の源泉である「ものづくり」によってこそ得られるものと確信しています。大学をとりまく環境が変化し、豊かさと少子化により若者の価値観人生観が大きく変化した今こそ、「ものづくり」で繁栄を築いた熟年世代の者にはその功罪をひもとき、21世紀に生きる若い世代に新たな技術の可能性についてのメッセージを送る義務があります。一方、若い世代の方々には、過去の歴史に学びながら、豊かで安全安心が得られる社会をめざして「できること」を見いだす課題が与えられました。同窓会という縦と横の繋がりが、職場で、地域で、全国で志を一にする輪を造り、歴史が与えた課題への答えを見つけるきっかけになればと思います。
平成24年 5月 二葉会会長 澤木宣彦 (昭和43年卒)