研究内容

研究概要

研究背景・目的

周波数が0.3~10THz付近の電磁波をテラヘルツ波と呼び、電波と光の特徴を併せ持つことから多くの応用が期待されている

物質透過性

半導体・プラスチック・セラミックス・紙・ビニル・木材・繊維・乾燥食品・氷・粉体・試薬・錠剤・歯・骨・脂肪などを透過

吸収スペクトル(指紋スペクトル)から試薬同定可能

取り回し易さ・被曝なし(人体に安全)

欠陥製品検査

麻薬・爆薬検査

医薬品検査

薄膜検査

テラヘルツを用いることでこれまで困難であった種々のイメージングが可能に

しかし光源や検出器の開発が遅れており応用が進んでいない

研究室の目標

高出力光源、高感度検出器開発を行いテラヘルツ波の応用開拓、実用化

テラヘルツ光源・検出器開発

テラヘルツ光源として以下の2種類の光源を開発している。どちらも我々独自の技術であり、世界でもトップレベルの性能(出力や帯域)を有している。

注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器is-TPG

injection-seeded THz wave parametric generator

2波長の近赤外光を非線形光学結晶に入射することで、世界トップレベルの高出力テラヘルツ波を発生する。さらに、発生の逆過程でテラヘルツ波を近赤外光に波長変換する手法により超高感度検出も実現した。

ダイナミックレンジ

最大10桁
10億分の1になったテラヘルツ波まで検出可能

周波数可変域

0.4–5THz

リアルタイムテラヘルツ測定装置

多波長同時発生、あるいは高速波長可変is-TPGにより複数波長の情報をカメラで1フレームで取得する。機械学習によりその検出画像を認識させ、サンプルをリアルタイムで識別する。今後テラヘルツタグ識別などへの応用が考えられる。

非線形光学結晶を用いた超短テラヘルツ波パルスの高効率発生

テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)に用いる事ができる非線形光学結晶からの超短テラヘルツ波パルス光源開発も行っている。下の写真は非線形光学結晶上に微小な導波路を作成し、超短パルスの赤外光を閉じ込め伝搬させることでテラヘルツ波への波長変換を高効率に行う。7THzまでの広帯域化や8桁のダイナミックレンジを達成し、現在は市販のテラヘルツ分光装置にも採用されている。今後は様々な結晶を用いてさらなる高効率化や広帯域化を目指している。

我々のテラヘルツ光源を用いた応用研究

我々のシステムを用いることで他光源では困難な応用が可能である

郵便物禁止薬物検査

EMS封筒、ダンボール、気泡緩衝材(プチプチ)からなる23mmの分厚い遮蔽物内に隠蔽された禁止薬物を模した糖類を測定した。各糖類の吸収スペクトルをデータベースと照合することで分布をイメージングすることに成功した。税関や国際郵便局での密輸取締実現に向けてさらなる高性能化を行っている。

テラヘルツ波CT

Is-TPGを用いて3次元イメージングも可能である。プラスチックやセラミクスを適度に透過するため内部の構造を測定でき、製品の欠陥検査への応用が期待される。これらサンプルは吸収が大きく、我々のシステム以外では測定が難しい。

テラヘルツ波増幅器

Is-TPGの原理を用いて世界初の実用的なテラヘルツ波増幅を実現した。テラヘルツ波を一旦近赤外光に波長変換し、その状態でノイズ除去と増幅を行う新手法により500 zJ(=10-21J)という極めて弱い入力に対して20億倍もの高い増幅度が得られた。今後はさらなる増幅度の向上や増幅可能な周波数の拡大、他光源の増幅などを行っていく。

段テラヘルツパラメトリック検出器によるイメージング

is-TPGの原理を用いた検出部を多段化し、各段の間で空間的にノイズを除去することで高感度化が実現した。130 zJ(ゼプトジュール=10-21J)の極微弱テラヘルツ波検出が可能となり、is-TPGと組み合わせた測定システムのダイナミックレンジは最大で125 dBに達した。以下に示すような高減衰の遮蔽物下のイメージングが可能となった。

その他の研究

  • 高効率テラヘルツ波発生を目指した非線形光学結晶薄膜作製
  • 機械学習による禁止薬物やタグの識別制度向上
  • 人の汗腺がテラヘルツ波帯のアンテナとして機能する可能性の追求
  • フレーリッヒ仮説(細胞膜がテラヘルツ波帯で共鳴振動する)の証明

テーマによっては企業や他研究機関との共同研究も行っています。