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研究内容

Molecular Dynamics Simulation

Graphite Peeling
核融合科学研究所にあるプラズマ実験装置LHD(Large Herical Device)は、磁場を用いて1億度以上の高温プラズマを閉じ込めます。1億度のコアプラズマから少し離れた周辺のプラズマの一部は、磁力線によってダイバータ板へと導かれます。ダイバータ板とプラズマは直接接触するため、ダイバータ板表面の損耗が問題になります。核融合炉実現のためには、ダイバータ板とプラズマとの相互作用を解明する必要があります。
LHDのダイバータ板はグラファイトでできています。我々の研究室では、グラファイトに水素原子が入射したときに、どのようにグラファイトが損耗するのかということを、分子動力学法(Molecular Dynamics)というコンピュータシミュレーション技法を用いて原子スケールから解明しています。
Hydrocarbon Dust Formation


ACT simulation (Binary Collision Approximation) and ACT-MD Hybrid Simulation

  • プラズマ-壁相互作用研究において、分子動力学法は有力なシミュレーション技法の一 つです。しかしながら、分子動力学法によって得られる素過程に関する知見は、ナノスケールの物理現象を説明できる一方で、実際に問題となるマクロスコピックな物理現象との間には大きな空間的・時間的スケールの隔たりがあります。
  • 我々の研究室では、空間的・時間的スケールの隔たりを埋めるため二体衝突近似(Binary Collision Approximation)コードの一つであるACTコードを開発し、サブマイクロメートルスケールのシミュレーションを実現しています。さらに、分子動力学法とACTコードのハイブリッドシミュレーションを行うことで、広いエネルギーレンジにおける、サブマイクロメートルスケールのシミュレーションに成功しました。
  • 炭素ダイバータ板は多結晶グラファイトとなっており、単結晶グラファイトが集まった構造をもち、その特性長はサブマイクロメートルのオーダーとなります。ACTコードを用いたシミュレーションによりサブマイクロメートルスケールの物理現象を原子スケールから解明することを目指しています。
  • fig1.png
ACT simulation
ダイバータ板は多結晶グラファイトからできており、単結晶グラファイトが集まった構造をしています。この一つの単結晶グラファイトの大きさは、数百ナノメートルから数十マイクロメートルまで、1000 倍程度のばらつきがあります。このため、ダイバータ板へのトリチウム蓄積挙動などを調べるためには、少なくともサブマイクロメートルオーダーの系のシミュレーションが必要となります。
原子の運動エネルギーが十分に高い領域(> 100 eV) においては、本来は多体衝突である原子衝突を、最も強い相互作用をする二原子間の衝突として近似することができます。このようなモデルを二体衝突近似モデルとよびます。二体衝突近似モデルの計算時間は、分子動力学法と比べて格段に短いため、サブマイクロメートルスケールのシミュレーションが可能となります。
我々の研究室では、ACTという二体衝突近似シミュレーションコードを開発し、分子動力学法では不可能な大きな系のシミュレーションを行っています。
ACT-MD Hybrid Simulation
分子動力学法は、(Brenner potentialを用いた場合)高い運動エネルギー(1keV以上)をもつ粒子の運動を正確に計算できません。一方、ACTコードを用いた二体衝突近似シミュレーションは、粒子間相互作用を最近接原子との相互作用にみで近似するため、粒子の運動エネルギーが低い場合(200eV以下)に適用することができません。
核融合炉では、数keVの高エネルギープラズマが材料に入射することがある一方で、デタッチメントにより数eV程度のエネルギーで入射することもあります。さらに、炭素材料においては、化学反応に起因する材料損耗(化学スパッタリング)が低エネルギー入射のときにも生じることが知られています。このような事情の下、低エネルギー(0.1eV以下)から高エネルギー(数keV以上)までの広いエネルギー領域でサブマイクロメートルスケールの大きな材料を扱うシミュレーション技法が必要になります。
我々の研究室では、分子動力学法と、ACTコードを用いた二体衝突近似シミュレーションのハイブリッドシミュレーションコードを開発することにより、原子スケールから、サブマイクロメートルスケールの物理現象に迫っています。
acat-md.png

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