磁気ランダムアクセスメモリの高密度化を可能とする書込み手法として熱アシスト書込みが注目されています.これはメモリ素子に情報を書き込む際に一時的に熱を加えるもので,情報の熱安定性の向上と低消費電力での磁化反転を両立できる技術として注目されています.
研究室ではこの熱アシスト型磁気ランダムアクセスメモリ素子に,熱磁気記録に応用された希土類−遷移金属合金や低キュリー温度のCo系多層膜を用いることを提案し,これらの材料を使用した熱アシスト磁気ランダムアクセスメモリ素子の開発を行っています.図は希土類−遷移金属合金であるGdFeCo膜を電子ビーム露光を用いて微細な素子を作製し,電流パルス印加によるスピン移行トルク(STT)磁化反転を試みた結果です.磁化反転は素子の巨大磁気抵抗効果により検出し,GdFeCo層とCo/Pd層の磁化が平行な場合と版平行な場合で抵抗値が異なります.正負の電流パルスでそれぞれ,GdFeCoの磁化方向を上向き,下向きに反転できていることが,抵抗の差から読み取れます.また,素子を加熱した際のSTT磁化反転の電流密度から,熱アシストSTT磁化反転が可能であるという結果を得ています.
現在は,低キュリー温度層,高キュリー温度層の複合膜や絶縁層を含んだトンネル磁気抵抗型の素子作製を試みており,実際のデバイス構成での熱アシスト記録の実証実験を行っています.
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GdFeCoメモリ層のSTT磁化反転

熱アシストSTT磁化反転の模式図(高温で垂直磁気異方性Keffが低下し,STTにより磁化反転する.)
*電気学会論文誌A, 140, 106 (2019).
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