半導体のさまざまなデバイスは,電子の電荷を利用して電圧・電流の増幅やディジタル信号の処理などを行っていますが,電子のもつスピンという情報はほとんど利用されてきませんでした.1988年に,FeとCrの超薄膜を積層した磁性多層膜の電気抵抗が,磁界を加えると数十%も低下する巨大磁気抵抗効果(GMR)が発見されました.これは,磁性多層膜を流れる伝導電子が,そのスピン方向と磁性層の磁化方向が平行であるか反平行であるかによって散乱確率が異なることから生じるもので,その後,伝導電子のもつスピンに依存する現象が非常に注目されるようになりました.


電子の電荷とスピンを利用するスピントロニクス

 この効果は,ハードディスク(HDD)の読み出しヘッドに実用化され、その高密度化に大きく貢献するとともに,電子の電荷とスピンをともに利用するスピントロニクスと呼ばれる分野を創製しました.電子の電荷とスピンをともに利用するスピントロニクスの発展は,不揮発の固体磁気メモリである磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)や生体情報を検知する高感度磁気センサなど,新たな高機能デバイスを生み出すと期待されています.高機能スピントロニクスデバイスには,ナノ構造の作製が必須であり,当研究室ではナノスピン構造の作製からスピントロニクスデバイスへの活用について研究しています.


共同研究,技術相談など

 磁性材料,磁性材料の応用に関して共同研究や技術相談を受け付けています.薄膜の磁性材料の作製やその微細加工に長年,取り組んでいますので,磁性材料の磁気特性制御,金属・酸化物の薄膜作製,ナノデバイス構造作製に関して高度な技術を有しています.真空蒸着,スパッタリングによる薄膜作製,これらの真空装置の設計などもアドバイスできます.さらに,磁性材料の磁気特性を評価する各種の磁力計や磁場中の電気特性を評価する装置なども揃っております.
 ご興味のある方は,E-mailあるいは,電話等でお気軽に連絡下さい.磁性や薄膜に関連することなら何でもお答えできるわけではありませんが,適当な方を紹介できるかと思います.