磁気抵抗効果を利用した磁気センサーはハードディスクドライブ(HDD)のヘッド,直線/回転位置検出装置,バイオ磁気センサーなど様々な応用分野があります.磁気抵抗素子は微細加工が容易で抵抗素子として検出できることから広い分野で応用可能ですが,超伝導を利用したSQUIDセンサーやフラックスゲートセンサーなどに比べ感度が劣ることから,超高感度で磁界を検出したい場合などへの応用は進んでいません.
 研究室では磁気抵抗センサーでSQUIDセンサーに匹敵する高感度化を実現することを目標とし,新しいタイプの磁気抵抗センサーを検討しています.図は我々が提案した磁壁(Domain Wall)移動型磁気抵抗センサーの模式図(ここではトンネル磁気抵抗(TMR)素子を用いた場合)です.磁気抵抗素子は一般に磁界に反応し自由に磁化方向が回転する自由層と外部磁界に反応しない固定層からなります.これまでの磁気センサーは自由層の磁化が磁界方向に回転することで磁界強度を検出していましたが,磁壁移動型では自由層内に磁壁(磁性体の磁区の境界領域)を導入し,これが外部磁界により移動する性質を利用し,高感度化を図ることを提案しましています.この方式により現在まで数ナノ(10-9)テスラという非常に微小な磁界検出に成功しています.今後は磁気抵抗センサーによるピコ(10-12)テスラの検出を目ざし,磁壁移動方式の更なる改良や新方式の提案を行っていきます.

 

磁壁移動型トンネル磁気抵抗(TMR)
センサーの模式図

関連論文:

Y. Hashimoto et al., J. Appl. Phys. 123, 113903 (2018).
Wang et al.: J. Phys. D: Appl. Phys., 44, 235003 (2011).
Wang et al.: J. Appl. Phys., 109, 07E523 (2011).
Wang et al.: J. Phys D: Appl. Phys., 43, 455001 (2010).
Wang et al.: J. Appl. Phys, 107, 09E709 (2010).
中島ら:J. Magn. Soc. Jpn., 34, 115 (2010).

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