磁性体の磁化は主に電子のスピンなどの電荷を持った粒子の角運動量により生じます.角運動量をもったものはコマと同様,歳差運動を行います.また,コマが床との摩擦により時間が経つと倒れてしまうのと同じように,電子の角運動量もエネルギーを失う(緩和する)ことでその角運動量方向が回転していきます.この角運動量方向の回転は磁化の回転を意味し,磁化反転をもたらすことになります. 磁気デバイスの応答速度は,磁化の源である電子の角運動量の歳差運動周波数,緩和定数に依存しますが,一般的にGHz程度です.半導体など他の電子デバイスの高速化とともに,磁気デバイスにも更なる高速化が求められています.磁気デバイスの高速化には磁化の動特性(スピンダイナミクス)を理解し,制御することが必要になります. 本研究室では磁化動特性を1psecという高精度で測定するため,極短パルスレーザーを使用した右図のような光学系を作製し,様々な磁性材料の歳差運動周波数,緩和過程を調べています.例としてGdFeCo膜について測定したスピンダイナミクスを示します.この試料の場合,150 psecという周期でスピンが歳差運動していることが分かります.このような測定により今後の超高速磁気デバイス材料を開発することを目指しています. |
スピンダイナミクス測定光学系
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GdFeCo膜の磁化ダイナミクス測定例 |