KrFエキシマレーザー (COMPex201, Lambda Physik社)

KrFエキシマレーザー発振装置外観(オレンジ色)。


真空チャンバー中で、SmBa2Cu3Oy超伝導体の 焼結体(左)にエキシマレーザーを照射することで生じるプルーム(プラズマの柱)。
本研究室では主に、高エネルギーのエキシマレーザーを用いて、 パルスレーザー蒸着(PLD)法によって機能性薄膜をエピタキシャル成長させている。

KrFエキシマレーザーの発生原理は以下の通りである。
KrとF2の混合ガス中で放電することで、F2が 分解・励起され、Krと結合することで不安定なKrFエキシマが形成される。 あるエキシマが分解して基底状態に落ちるときに放出される光(波長248 nm) によって他のエキシマで誘導放出が発生し、さらに共振器で増幅されることで 高エネルギーのレーザー光が出力される。

フォーカスレンズを介してレーザーを焼結体などの固体原料(ターゲット)に照射・ 集光することで、固体原料表面が蒸発・励起され、対向して置かれた基板上に 薄膜が形成される。放出された原料の一部が励起され発光が生じた結果、 左写真のような"プルーム"と呼ばれる柱状のプラズマを生じる。

ターゲットからは、原子・分子、中性種あるいはイオン化された粒子の他に、 それらが複数個結合したクラスターや、数~数十ミクロンサイズの融解物が 放出される。特に融解物は、基板表面に大きな液滴状固形物として付着するため、 エピタキシャル成長を阻害する要因となる。
融解物の発生を抑えるため、高密度ターゲットの使用や 材料に応じたレーザーエネルギー密度などの条件最適化が必須である。

高エネルギーの紫外線レーザーであるため、高融点酸化物の薄膜化に適しており、 酸化物超伝導体を初めとした機能性酸化物薄膜の作製に広く用いられている。
半導体薄膜の作製で主流な化学気相蒸着(CVD)法に比べて、 表面平坦性が悪いデメリットがあるが、CVD原料(有機金属錯体など)の作製が困難な 重金属を含む多元素系材料の薄膜化が容易というメリットを持つ。


スペック
・励起ガス: KrF
・波長: 248 nm
・最大出力: 600 mJ/pulse
・最大繰り返し周波数: 10 Hz
・レーザーパルス幅: 数十 nsec



実験装置に戻る