半導体のさまざまなデバイスは,電子の流れの大きさを制御することによって電圧・電流の増幅やディジタル信号の処理などを行っていますが,電子のもつスピンという情報はほとんど利用されてきませんでした.十数年前に,FeとCrの超薄膜を積層した磁性人工格子の電気抵抗が,磁界を加えると数十%も低下する巨大磁気抵抗効果(GMR)が発見されました.これは,磁性人工格子を流れる伝導電子が,そのスピン方向と磁性層の磁化方向が平行であるか反平行であるかによって散乱確率が異なることから生じるもので,その後,伝導電子のもつスピンに依存する現象が非常に注目されるようになりました.この効果は,最近,ハードディスク(HDD)の読み出しヘッドに実用化されてその高密度化に大いに寄与しています.さらに,絶縁層に挟まれた2つの磁性層間を電子がトンネルするとき,磁性層の磁化方向によってトンネル確率に差が生じるスピントンネル効果も盛んに研究されています.


2.5 インチハードディスク
ドライブ(HDD)の中身

 このように伝導電子のスピンを利用する分野は,スピンエレクトロニクスと呼ばれるようになっており,不揮発の固体磁気メモリである磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の実現をスピンエレクトロニクスの当面の目標として世界各地で研究開発が行われています.当研究分野では,スピンエレクトロニクスをキーワードに,ナノサイズの磁性体のスピン構造の研究など基礎的なテーマから,MRAMや磁界センサなどの応用までさまざまな研究課題に取り組んでいます.


共同研究,技術相談など

 磁性材料,磁性材料の応用に関して共同研究や技術相談を受け付けています.また,薄膜の磁性材料の作製に長年,取り組んでいますので,金属や酸化物の薄膜技術に関してアドバイスも可能です.真空蒸着,スパッタリングによる薄膜作製,これらの真空装置の設計などは得意な分野です.さらに,磁性材料の磁気特性を評価する各種の磁力計なども揃っております.
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