脳波による思考の認識

研究背景

近年,Brain-Computer Interface (BCI)*の研究が盛んに行われている. BCIとは,脳活動を計測し,思考判別をリアルタイムで行うことで, 外部機器操作や意思伝達を可能にするインターフェイスである.BCIを用いることで, 例えば身体が不自由な人が,考えるだけで車椅子を動かしたり, 意志を伝えたりすることが可能となる.また一方,健常者を含めた一般的な適用例として, ロボットなどを,脳波を用いて操作するアミューズメント分野への応用も期待されている.

P300 Speller

BCIの一種に, 脳波から得られる事象関連電位の一種であるP300を特徴量に用い, ユーザーが思考のみで文字入力を行うP300 spellerがある. P300とは,頻度の異なる二種類以上の刺激を与えたときに, 意識している刺激呈示の300msに生じる陽性の電位変化である.

P300 speller では,インターフェースに表示された文字をランダムに1行または1列ずつ点灯 させることで,視覚的な刺激をユーザーに呈示する. ユーザーは選択したい文字に対して意識を集中させることで, その文字が含まれる行や列の点灯時にP300が誘発され, このP300を捉えることで, ユーザーの選択したい文字を特定し,文字入力が可能になる

デモビデオ

Inputting of Japanese characters using P300 speller with a function of text prediction


Top speed input by our P300 speller


認知症の早期発見

高齢認知症患者数は年々増加し,2030年には700万人以上が認知症患者となると推定されている.また認知症は,症状が進んでからの治療が困難であるため,早期発見が重要とされている. 本研究では,脳波の特徴量であるP300を用い,認知症スクリーニング検査のMMSE(Mini Mental State Examination)スコアを推定する回帰式を同定した. また,名古屋COI (Center of Innovation) 拠点未来社会創造機構サステナブル基盤部門では,スマートチェアの開発が進められている.このスマートチェアには磁気センサにより非接触で脳波を測る装置が搭載される予定である.一人暮らしのお年寄りにスマートチェアで日々くつろいでいただくだけで,認知症の可能性を早い段階で検知できるのではと期待して研究を進めている.

P300頂点潜時に基づく認知症の兆候検出に関する研究,三輪ほか
出典:2018年度人工知能学会全国大会(第32回),2F3-OS-4b-04