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実験改革

やったぞ学生実験プロジェクト

名古屋大学工学部電気系学科学生実験検討委員会 平成9年1月 発行「やったぞ!学生実験プロジェクト」から


まえがき

工学教育において、学生実験はカリキュラムの中できわめて重要な部分を占めています。講義とか演習などの座学により、工学上の基本的な概念・知識・理論をある程度習得することはできますが、それだけで工学の真髄を本当に身につけて、それを応用したり、さらには独創的に発展させて行く能力を養成することはできません。

とくに電気系で扱う学問分野は、エネルギー・制御・材料・部品・情報・通信・システムなど、極めて多岐にわたっています。また電気・電子工学の特徴として、扱う対象が電磁界・量子現象・エネルギー・情報・信号など、日常生活では直接触れ体験することが少なく、また抽象的な概念を通して考えなければならないものが多数を占めます。

本学電気系の学生実験は、実験装置の設計製作・測定・評価検討を通じて、それぞれの学問分野のおもしろさを体験的に理解するとともに、それぞれの学生が、学修した基礎知識を確実なものにし、更に発展させて独創的な学術的・工業的な貢献ができるように教育することを目的としています。

電気系の学生実験は、次のような3科目で構成されています。

電気・電子工学実験第1(3単位、週3時間x3学期)
電気電子工学に関する基礎的実験
(受動回路、ダイオード・トランジスタの特性、磁気測定、ホール効果、直流モータ、変圧器、パルス伝送特性、演算増幅器、マイクロコンピュータ)
電気・電子工学実験第2(2単位、週3時間x2学期)
専門性の高いテーマに関する実験
(数値電界解析とCAD、パワーエレクトロニクス、電力伝送系統の故障標定、演算増幅器応用、ロボットの制御、ディジタル信号処理、変調と復調、マイクロ波、光通信システム、計算機間データ通信とプロトコル、画像処理)
電気・電子工学実験第3(1単位、週3時間x1学期)
10テーマの内から1つを選び、実験の計画、実行、検討、報告を行なう。

この報告書は、最後の実験第3に関するものであり、電気教室では通称「大実験」と呼んでいます。この「大実験」は、電気系4年前期の午後約16回の時間を費やして、先端技術の1つのテーマを自学自習的に学ばせるもので、その主な特徴は次の通りです。

  • 実験第1、第2とは対照的に詳細な実験指導書は与えず、0.5ページ程度の実験概要だけを示して、自発的学修と創意工夫により実験を進める。
  • 大学院生から選ばれたティーチングアシスタントに実験指導補助をお願いし、実験準備・遂行の円滑化を図った。
  • 最終回には、成果報告会を行ない、発表方法や討論の仕方も学ぶ。
  • 先端的な実験を実現するために、平成5年度から平成8年度にかけて、この「大実験」のために電気系教室では総計8,000万円を投入し、その充実につとめてきた。

本報告書の随所に述べられているように、大多数の学生が、この「大実験」をきわめて肯定的に受け止めており、大きな教育効果がありつつあるものと確信しています。

学生実験の充実のため、ご支援・ご協力をいただいた本学工学部及び同電気系教室の各位に感謝します。今後とも、学生実験担当の教官・技官の皆様とともに、学生実験の充実のため、努力してゆく所在であります。

電気系学生実験検討委員会委員長 板倉文忠