電子工学専攻・五十嵐・長尾研究室(ナノ電子物性研究グループ)では、(株)豊田中央研究所との共同研究で、窒化ガリウム(GaN)のナノスケール結晶欠陥がデバイス特性に与える影響を明らかにしました。
p型GaNの自由電荷密度の上限を決める要因が、結晶中の不純物(Mg)の偏析にあることを明らかにしました。2000年代初頭以来議論が続いてきた、ナノスケール結晶欠陥の構造解明を実現し、この欠陥の形成が自由電荷密度の上限に影響を与えるメカニズムを明らかにしました。この結果は、論文誌に掲載され、Spotlight article(注目記事)に選定されています(Applied Physics Express 12, 031004(2019))。
本研究は文科省「省エネルギー社会実現に資する次世代半導体研究開発」の委託を受けて行われた。
Mgが偏析した結晶欠陥の電子顕微鏡写真。明るい点がGa原子の観察像。上下のGaN結晶に挟まれた暗い原子層にMgが偏析。挿図はシミュレーション像。
電気工学専攻・パワーエレクトロニクス研究室では豊田合成との共同研究で縦型GaNパワー半導体であるGaN MOS-FETを用いて19MHzのスイッチング動作を実現しました。
電気工学専攻・山本研究室(パワーエレクトロニクス研究室)では豊田合成との共同研究により、世界で初めて縦型GaNパワー半導体であるGaN MOS-FETを用いた19MHzのパワー回路におけるスイッチング動作を実現しました。GaNと同じ様な化合物半導体であるSiCを使ったパワー半導体と比較しても2倍の高周波性能を持つことが分かりました。この成果により、電気自動車や携帯、パーソナルコンピュータへのワイヤレス給電における電力伝送距離を10倍以上に拡大することを可能とするものです。
電気学会論文誌(2019年2月号)の特集論文「省エネ社会を支える高効率小型電源技術―高周波電源コンポーネンツの最前線―」における「総論:GaNパワー半導体応用ロードマップ」(pp. 76-79)にその内容が掲載されています。
左図:パワー回路に実装したGaN MOS-FET、右図:GaN/SiC MOS-FETのスイッチング特性比較
塩川和夫教授(電気工学専攻)がSCOSTEP会長に選出されました。
7月13日(土)にカナダのモントリオールで開催された国際学術組織であるSCOSTEP(Scientific Committee on Solar-Terrestrial Physics、太陽地球系物理学科学委員会)の総会で、電気工学専攻の塩川和夫教授が、各国代表者による投票により会長に選出されました。任期は2019年7月からの4年です。SCOSTEPはISC(International Science Council, 国際学術会議)傘下の組織の一つで、太陽地球系科学に関する5か年国際共同プログラムを立案・推進しています。またSCOSTEPは国連宇宙平和利用委員会の恒久オブザーバーです。SCOSTEPの会長職を日本人が務めるのは初めてになります。
就任あいさつでの塩川教授
人事異動
情報・通信工学専攻・武田研究室では、信号処理理論に立脚して人間をとりまくさまざまな環境とのインタラクション技術を研究しています。
武田研究室では,信号処理理論,機械学習理論などの基礎理論を発展させつつ,音声認識,行動理解,自動運転,インタラクション,スポーツ科学といった幅広い応用システムの高度化に取り組んでいます.研究室での研究成果を融合し,音声や身振り目線等により自動運転車を操作できるマルチモーダル対話型自動運転車を実現しました.
電子工学専攻・岩田(聡)研究室では高密度メモリ,高機能センサの研究を進めています.
電子工学専攻・岩田(聡)研究室では磁気ランダムアクセスメモリの高密度化のため,スピン流,電界,熱など様々な高効率磁化反転手法を検討しています.また,巨大磁気抵抗効果などを利用した高機能磁気センサデバイスの開発や超高密度磁気ストレージのための微細加工磁性体の作成にも取り組んでいます. この研究はあらゆるものがインターネットに接続されるSociety5.0を支える基盤技術となります.
電気工学専攻・三好研究室(宇宙地球環境研究所)では、科学衛星のデータ解析とコンピューターシミュレーションを通して、宇宙空間プラズマの研究を進めています。
電気工学専攻・三好研究室(宇宙情報処理グループ)では、JAXAが打ち上げた科学衛星「あらせ」や「ひので」衛星のデータ解析を進め、太陽面爆発やオーロラ、高エネルギー電子加速といった太陽や地球周辺の宇宙空間で起こるプラズマ現象の研究を進めています。また、スーパーコンピュータを用いて宇宙空間プラズマ現象のシミュレーション研究も行っています。
写真 (a) ジオスペースを探査する「あらせ」衛星 (© ERGサイエンスチーム)、(b) 太陽を観測する「ひので」衛星 (© ISAS/JAXA) 、(c)宇宙地球環境研究所の統合データサイエンスセンター(CIDAS)スーパーコンピュータシステム
人と優しく接触する安全な装着型アシストロボットシステムを開発しています。
情報・通信工学専攻・道木研究室では、安全で効果的に力を伝達する装着型アシストロボットに向けて、計測や機構設計から制御則まで広く研究しています。圧力センサの導入により人体表面に加わる力分布を直接計測することで、安全にアシスト量を増やすことが可能なロボットシステムと制御、および、より人にやさしく安全なアシストの実現を目指した布型アクチュエータの開発や制御にも取り組んでいます。
道木研で研究している装着型アシストロボットや柔らかい布型アクチュエータの例
人事異動
電子工学専攻・天野研究室ではGaN理論性能限界を持つpnダイオードの作製に成功しました.
電子工学専攻・天野研究室では省エネな社会実現に向けGaNパワーデバイスが近年注目を浴びていますが,現在まで十分な耐圧を示すデバイスの作製が困難でした.本研究ではGaNを深く垂直に彫るビュート型耐圧構造の作製技術を開発したことにより,電界分布が均一で理論性能限界耐圧を持つ縦型GaN pnダイオードの作製に初めて成功しました.
(a) ビュート型GaN p-nダイオード概略図, (b) デバイス断面SEM像, (c),(d) 電界分布シミュレーション結果, (e) アバランシェ降伏時の電流による発光像, (f) 逆方向J–V特性のエッチング深さ依存性
電気系M1中間発表の優秀発表者の表彰
2018年12月5日と12日に開催された電気系M1中間発表の優秀発表賞の受賞者が表彰されました。受賞者とその所属研究室は以下になります(順不同、敬称略)。
大矢根蒼(山本研)、松坂陣(吉田研)、佐伯勇弥(大野研)、畑野太郎(加藤研)、青島慶人(須田研)、大﨑朗(大野研)、林賢哉(新津G)、中根一也(堀研)、長岡一起(藤巻研)、長谷川将希(堀研)、稲垣安隆(藤井研)、二村拓未(道木研)、内田脩斗(古橋研)、角倉慎弥(河口研)
以上
オーロラや宇宙からの電磁波動の経度拡がりを計測する国際観測網を新たに北極域に展開しました。
電気工学専攻・塩川研究室(宇宙電磁観測グループ)では、オーロラや宇宙空間からの電磁波動の経度拡がりを計測するために、北極を中心とした磁気緯度60度付近のロシア、カナダ、アラスカ、アイスランド、フィンランドに、高感度カメラや磁力計・アンテナ群を設置し、JAXAの「あらせ」衛星プロジェクトとも協力した国際共同研究を2016年から展開しはじめました。このプロジェクトはPWINGと名付けられ、数多くの成果が上がりはじめています。
(左図)PWINGプロジェクトの観測点。●で示したように、2017年3月21日の特異な太陽風が地球に到達した際に、宇宙からの電磁波動(Pc1/EMIC波動)が200度もの広い経度幅にわたって観測されている。(右上)その時にアイスランドのHUS観測点で撮影された特異な青いオーロラ(塩川教授らによる論文)。(右下)JAXAの「あらせ」などの人工衛星のデータを組み合わせることにより、地球周辺の酸素原子イオンの経度拡がり(図の黄色い部分)を初めて同定した成果(能勢准教授らによる論文)。両論文は米国地球物理学会誌(Geophysical Research Letters)に2018年10月に掲載されました。
この研究は科学研究費補助金・特別推進研究(JP 16H06286)及び基盤研究(B)(JP 16H04057)により支援されています。
脳波計測による認知症の早期兆候検出に取り組んでいます。
情報・通信工学の古橋研究室では、非接触の磁気センサが搭載されたスマートチェア*により計測された脳波データを用い、認知症スクリーニング検査のMMSE(Mini Mental State Examination)スコアを推定するモデルを同定しました。これにより、一人暮らしのお年寄りがスマートチェアで日々くつろいでいるだけで、認知症の可能性を早い段階で検知できるのではと期待して研究を進めています。
*名古屋COI(Center of Innovation)拠点未来社会創造機構サステナブル基盤部門で開発中
多波長テラヘルツパラメトリック発生によりリアルタイム分光および高速分光イメージングが新たに実現しました。
電子工学専攻・川瀬研究室では多波長テラヘルツパラメトリック発生/検出法を確立し、リアルタイムで試薬を識別する技術や、高速に遮蔽物内の禁止薬物をイメージングする技術を開発しました。郵便物仕分けライン内での禁止薬物検査や製品製造ラインでの欠陥検査等への利用が期待されます。
郵便物内に隠匿された禁止薬物を模した糖類を、右図に示すように非破壊で識別/イメージングすることができました。多波長発生により従来に比べて大幅な高速化が実現しています。
人事異動
トリチウムのβ崩壊によるDNA損傷を分子動力学シミュレーションで調べています。
トリチウムはヘリウムにベータ崩壊します。電気工学専攻・中村研究室では、この壊変効果が生体分子(DNA)に及ぼす影響を、分子動力学法を用いて定量的に調べています。このシミュレーションでは、DNAを構成する塩基に含まれる水素をヘリウムに変えた初期状態を用意します。そこから、全原子のニュートン運動方程式を解き、DNA構造が崩れる様子を調べています。
DNAテロメア構造のグアニンの水素をヘリウム(灰色球)に置き換える。もともと水素結合での結びつきが弱くなることで、DNAの構造が崩れやすくなる度合いを分子動力学法により、定量的に調べた。
人事異動
東ロボプロジェクトの技術的側面をまとめた書籍が東大出版会より出版されました。
情報・通信工学の佐藤・松崎研究室では、「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトの参加し、2013年より大学入試問題を解くシステムを研究してきました。この本には、我々の研究室で実施した国語、数学、世界史の3つの科目の研究成果が含まれています。なお、10月のテクノフェアでは、最新の研究成果を展示します。
メモリを搭載した超伝導単一磁束量子マイクロプロセッサにおいて内蔵プログラムを50GHzで実行することを実証しました
電子工学専攻・藤巻研究室では、超伝導8ビットマイクロプロセッサを設計し、命令メモリに格納したプログラムの実行に成功しました。このプロセッサは、50GHzのクロック信号を用い、磁束量子を情報担体としたビットシリアル演算を行います。半導体以外の固体素子では初のプログラム内蔵方式計算です。
動作実証したマイクロプロセッサの顕微鏡写真(産業技術総合研究所プロセスにて試作)
台風接近に伴う大学院入試の対応について
人事異動
高温超伝導体中へ垂直に成長したナノサイズ不純物を導入することで、液体窒素中超伝導特性の世界最高記録を更新しました。
電気工学専攻・吉田研究室では、安価な液体窒素での運転が期待される高温超伝導体に対して、ナノテクノロジーを用いて不純物を垂直に成長させることで、液体窒素中超伝導特性の世界最高記録を更新しました。研究開発が進んでいるリニアモータカーなどの超伝導機器は、低温超伝導体で構成され、高価な液体ヘリウムを用いて運転されています。この技術は、将来的な超伝導体の液体窒素運転につながる成果です。
イットリウム系高温超伝導薄膜(白)に導入された不純物酸化物(黒)の(a)平面および(b)断面透過電子顕微鏡像。
人事異動
単一プログラムのマルチスレッド実行での性能を向上させるハードウェアおよびコンパイラ技術を提案しました。
土井渓太、塩谷亮太、安藤秀樹(安藤研究室)は、単一プログラムのマルチスレッド実行での性能を向上させるハードウェアおよびコンパイラ技術を提案しました。
波長1.7um帯干渉計測装置を用いてマウス脳深部の非破壊計測に成功
電子工学専攻・西澤研究室では,超広帯域な超短パルスファイバレーザー光源と,それを用いた波長1.7 um帯の高分解能光断層計測装置(Optical coherence tomography (OCT)/Optical coherence microscopy (OCM))を開発し,マウス脳深部(海馬等)をマイクロメーターの分解能で非破壊計測することに成功しました.
テクノフロンティアセミナー(TEFS2018) -触れてみよう、電子と情報の最先端に-
巨大な金属綿毛の生成手法が新たに開発されました。
電気工学専攻の梶田信准教授(大野哲靖研究室)らによって、 金属粒子を堆積させながらヘリウムプラズマを照射すると,繊維状のナノ綿毛構造が巨大化することが発見されました。
巨大化したナノ構造金属の電子顕微鏡写真
平成31年度大学院入学試験(平成30年実施)の説明会開催のお知らせ
電気工学専攻,電子工学専攻,情報・通信工学専攻の前期(修士)課程入試の受験を希望する方を対象に、合同入試説明会を開催します。
人事異動
研究分野